検査不正続発は検査のIT/ロボット化の遅れが原因

自動車部品メーカーの日立Astemoで延べ2億点に上る部品で製造上の不正があったことが明らかとなりました。不正の内容は、顧客と取り決めていた品質試験を行わなかった、規格外の製品を出荷したなどとなっています。同社の特別調査委員の報告を受けた最終調査では、不正と言う言葉は使わず不適切行為という言葉を使っています。これは品質や安全性に問題は無かったと判断されるからのようですが、検査をせず出荷した部品を検査した訳ではないことからこの判断は非科学的であり、同社で今回のような不正が発生した原因の一端を表していると言えます。

同社の不正は国内外の15の工場で、長いものは40年続いていたと言うことであり、不正な手続きが正規手続き化していたことになります。メーカーの製造現場では新人はベテランから手順を教え込まれますから、ベテランが間違った手順で仕事をしていればそれが新人に引き継がれることになります。こうして間違った手順が長い間続くことになります。たぶん日立Astemoもこうやって不正が続いてきたと思われ、特別調査員会は悪意がないことからも不正ではなく不適切行為と表現しているものと思われます。

近年日本の名だたるメーカーで同様な不正が相次いで明らかになっています。直近ではダイハツの認証不正がありましたし、昨年は日野自動車で大規模な型式不正がありました。その前には三菱電機で広範な品質不正が発覚しています。これまで日本では日本製品の品質は世界一と言われてきましたが、どうやら間違いのようです。バブル期に「JAPAN AS NO.1」と言う本が出版され、多くの日本人がこの言葉を真に受けましたが、後日アメリカ人が言うには、アメリカでそんなことを言う人はいないし、実際日本が世界一の国になったことは一度もなく、日本で本を得るためのセールスワードであると言うことでした。日本製品の品質は世界一という言葉もどうやら日本人が勝手に言っていただけのようです。

私はメーカーに入社し工場実習も経験しましたが、製造現場の従業員はやる気や性格にばらつきが大きく、担当者で製造品質がばらつくのは当然と思えました。従ってばらついても大丈夫な設計と品質検査が重要となります。そのためメーカーは検査部門にはベテランを配して厳しく検査しますが、検査員の経験と勘に頼った検査になっているように感じらます。検査員毎にばらつきがあり、馴れも重なり検査が不正確になって行きます。これは人間がやっている限り避けられないように思われます。

日立Astemoの対策を見ると論理的に考えられる対策が網羅されていますが、大部分が人間の行為に関することであり、人によりばらつきは避けられませんし、時間の経過とともに効果が薄れる可能性があります。品質検査は決められた仕様を満たしているかどうかのチェックであり、コンピュータやロボットが得意とするものです。表面の傷や組付け部の検査は画像検査装置でやらせるなど検査の大部分の工程をコンピュータを使ったシステムにするのが一番間違いありませんが、日本のメーカーはこの部分が一番遅れているように思われます。日立Astemoの場合、「データの改ざんが発生し得ない機器のデジタル化や自動化の推進」と言う対策が挙げられていますが、これは日本の全メーカーに必要な施策のように思われます。