悪代官(金融庁)が越後屋(損保ジャパン)に行くらしい

8月24日、ビッグモーター(BM)による自動車保険金不正請求問題で、金融庁が損保ジャパンに対し保険業法に基づく立ち入り検査を9月にも行う方向で検討していることが新聞電子版で一斉に報道されました。恐らく金融庁からのリークです。この報道に対するヤフコメを見ると、「立ち入り検査を新聞で報道していたら検査にならない」「金融庁と損保ジャパンの間で取引が成立したな」とのコメントがありました。私もそう思います。立ち入り検査は突然入るから効果があるのであり、1週間以上前に通知、それも新聞で報道していたら効果半減です。なぜなら検査される方は辻褄が合うように万全の準備をするからです。恐らく想定問答集を作り担当者は模擬質疑応答を繰り返すことになります。更に損保ジャパンに天下っている元金融庁職員が金融庁から検査のポイントを聞き出しますから、周到な準備ができます。たぶん金融庁と損保ジャパンが打ち合わせて作成された検査シナリオに沿って実演されるだけです。そうでなければ検査前に報道で立ち入り検査を知らせるなどあり得ません。銀行員の友人によると金融庁検査は突然やってくるから怖いと言うことでした。今回の損保ジャパンへ立ち入り検査の事前報道は、金融庁のパフォーマンスであり、損保業界と金融庁との癒着は相当ひどいことが伺えます(その1つの証拠として2020年7月に退任した遠藤俊英金融庁長官は2021年1月には東京海上日動の顧問に就任している。今回の事件で活躍していると思われる)。

自動車保険の不正請求はBM以外でも殆どの自動車修理工場がやっていると言われていますし、損保が事故車を修理紹介し、修理工場がそれに応じて自動車保険を紹介する取引も業界の慣習と言われいます。この取引が行われている限り自動車保険の不正請求を損保が防げないのは当たり前です。何故なら損保は不正請求部分を保険料の値上げで回収でき損をすることがないからです。結局保険契約者が食い物にされていることになります。企業保険でも損保がカルテルを行っていたことが明らかになっていますが、これも損保業界の慣習です。損保は1つの保険をリスク分散から多数の損保でシェアを分け合って引き受けることから、調整ルートが確立しています。従って今更これをカクテルと言われても損保の担当者としてはピンとこないと思われます。それにこれは金融庁のお墨付きを得て行われて来ています。

このように今問題になっている損保の不正は全て金融庁の承認のもとに行われており、金融庁としても今更検査に入って不正と認定することはできません。そのため金融庁内の関心事は、どうやって国民を納得させるかにあると思われます。今回の金融庁の損保ジャパン立ち入り検査は、江戸時代の時代劇によくある庶民向けに悪代官(金融庁)が越後屋(損保ジャパン)に行って一芝居打つ構図です。