司法取引制度で検察官が司法ディーラー化

2019年7月の参議院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、河井克行元法相から現金を受け取り(一度は不起訴となりながらその後検察審査会で起訴相当議決を受け)起訴された広島の町議・市議・県議に対し東京地検特捜部の検事が取り調べの中で供述を誘導した疑いがある問題で、ある起訴された市議の弁護人がこのやりとりを示す録音データを文字起こしした文書(A4サイズ15枚)を公表しています。公表したのは、2020年3~6月にあった任意聴取と、2021年1月に東京地裁であった克行氏の公判の証人尋問前に事実関係などを確認する「証人テスト」のやりとりの一部ということです。

文書によると取り調べで買収の意図を否定した被告に対し、検事が「そんな話が通用する舞台じゃないから」「議員続けていただきたいと思ってるんで、否認っていう風にしたくない」「『もう事実認めています、争いません』『反省してます』という内容にしたいと思ってますんで」「克行を悪者にするための調書ですからね」「何とか処分を不起訴であったり、なるべく軽い処分に」と述べていることが明らかになっています。また証人テストの部分では、克行氏の公判担当検事が「それNG」などと指摘し、公判で調書に沿った証言をさせるためか繰り返し練習する様子も記録されているということです(以上中国新聞の記事による)。

この後取り調べを受けた町議・市議・県議は全員 不起訴になっていますから、検察が不起訴を条件に買収の意図を認めるよう誘導したのは明らかです。そもそも買収事件でのそれまでの求刑基準は、貰った金額が1万円未満の場合は起訴猶予(不起訴)、1万円~20万円は略式起訴(裁判なしで罰金刑)、20万円を超える場合は起訴(裁判で刑が確定)となっていましたので、広島の議員をこれに照らすと起訴が数名で、その他は略式起訴となり、不起訴は有得ませんでした。これが全員不起訴になった時点で、このような取引があったことは明らかでした。

さらに言えば検察はこの不起訴は検察審査会で起訴相当議決がされることも想定していたと思われます。その場合議員には「最初に不起訴にしたのだから約束は守った」「再捜査の結果として起訴ではなく略式起訴という軽い処分にする」と弁明すれば、裁判を起こされ取り調べの内幕がばらされることはないと考えていたと思われます。議員にとっては略式起訴でも起訴でも議員の地位を失うのには変わりなく、「騙された」となるのは当然です。議員としても取り調べ中「こんな旨い話あるのかな?」と半信半疑だったため、取り調べの録音に至ったものと考えられます。取り調べ検察官は広島の議員を「田舎の議員」と馬鹿にし過ぎたようです。

この取り調べの記録から最近の検察官の特徴が浮かび上がってきます。それは検察官の取り調べが「取引」「ディール」化しているということです。言い換えれば検察官がディーラー化しているということです。これは2018年6月から司法取引制度が使えるようになり、同年11月東京地検特捜部はこの制度を使い日産のゴーン会長を逮捕して以来の特徴と言えます。司法取引制度は組織犯罪や贈収賄事件など使える犯罪が特定されており、本件のような公職選挙法違反には使えません。本質的には公職選挙法違反事件こそ使いどころですが、司法取引制度制定の際国会議員の反対で除かれたと考えられます。しかしこれを除く理由はなく検察としてはなし崩し的に本件の取り調べや捜査に使っているものと考えられます。現在捜査中の秋元真利衆議院議員の収賄事件でも贈賄を否認していた社長が最近一転認めていますが、これも取り調べの中で今回の広島でのような取引があったものと思われます。更に検察は司法取引制度を悪用し、誰を逮捕するかについて政府と取引するようになっています。例えば東京オリンピック贈収賄事件では、森元首相、武藤事務総長、竹田元JOC会長は逮捕しない、高橋治之元東京オリンピック組織委員会理事(非常勤)だけに留めることで東京地検特捜部と政府で取引が成立しているように思われます。

このように司法取引制度で検察官がディーラー化しており、検察官の匙加減一つで得をする人、損をする人の差が大きくなりそうです。