自民党はNHKのためなら何でもやる

スマホの普及を踏まえた公共放送の在り方について自民党の情報通信戦略調査会(野田聖子会長)は8月に23日、スマホなどを通じたネット配信を放送法改正でNHKの「本来業務」とするよう位置付けを変えた上で、テレビがなくてもスマホで視聴したい人から受信料に相当する費用負担を求めるべきだという政府、NHKに向けた提言をまとめたと言う報道です。提言案では「NHKは放送とネット双方の特性を最大限に生かし、国民に必要な情報を届けていくべきだ」と明記したということですが、欺瞞に満ちています。ネットは誰でも使えるのが特徴であり、NHKの「本来業務」とする必要はありません。NHKの「本来業務」は放送ですが、ネット配信も付随業務としてできるのは当然です。新聞社や民放のようにNHKはネット配信を制限すべきと言う理由はありません。新聞社や民放がNHKのネット配信を制限すべきと言う理由は、約7,000億円にも上る受信料をネット配信に注ぎ込むからという理由からのようですが、ネット配信にかける費用はそんなに大きくなりません。またお金をかけても効果は上がりません。ネット配信は視聴者に支持されるコンテンツをどれだけ配信できるかが勝負です。たぶん現在のNHKの放送内容をネットで配信しても視聴者はわずかに留まると思われます。NHKの無料ネット配信であるNHKプラスの申込者数が300万件を超したとの報道ですが、これは無料だからの数字です。料金を取るとなったら10分の1以下に減少すると思われます。なぜならNHKの番組にお金を払ってみるようなものは殆どありません。NHKの放送を1週間に5分以上見る人の割合は約55%となっています。即ち国民の半数はNHKを週に5分も見ていないのです。この数字を見ればNHKはもう必要とされていないことが分かります。従って今回の自民党の提言「NHKは放送とネット双方の特性を最大限に生かし、国民に必要な情報を届けていくべきだ」とは欺瞞と言えます。必要とされていないNHKが何を配信しても国民には届きません。

それにしても自民党はNHKの頼みは何でもかなえます。このネット配信についてもNHKの計画をそのまま提言に取り入れています。自民党に相談することなくNHK改革を進めた前田会長に代わり、お飾りと言える稲葉会長になって自民党もがぜんやる気が出てきたようです。国民の受信料を下げてほしいという要望は聞かずに、前田会長が決めた受信料の引き下げ分をネット配信料で取り返す魂胆が丸見えです。その結果NHKは受信料とネット配信料で焼け太りとなります。

自民党がNHKの言うことは何でも聞くことのもう1つの表れが今年4月から導入された割増金制度です。これは受信設備がありながら受信契約を結ばない人や受信料を払わない人に受信料の2倍の割増金を請求することが出来ると言う制度です。もしこれが世の中で認められるのなら、みんな真似します。その結果普通の契約でも契約を結ばない人には代金の2倍の割増金が請求されるようになり、代金の支払いが遅れれば2倍の割増金が請求されるようになります。そうなれば世の中成り立たなくります。

現在金銭消費貸借契約に基づく借入金(サラ金など)の返済や購入代金の支払いが遅れた場合には遅延損害金の制度がありますが、サラ金などの遅延損害金の上限利率は借入金額により制限され、最高は借入金額10万円未満の場合で29.2%です(利息制限法7条)。一方事業者と消費者の間で締結された金銭消費貸借以外の契約における遅延損害金の利率は、上限が14.6%に制限されています(消費者契約法9条2号)。このためクレジットカードのショッピング利用などでは遅延損害金の利率を年14.6%と定めているケースが多いようです。いずれも規定を超える部分は無効となります(消費者契約法9条2号)。また税金の滞納の場合の遅延損害金も上限は14.6%になっています。

これを考えれば、受信料の2倍の割増金が認められるはずがありません。この制限はサラ金の高金利で庶民が苦しんでいたことから設けられてたものであり、公序良俗の観点から定められたものです。従ってNHKの割増金制度は公序良俗違反で無効と言うことになります。こんな制度を承認した自民党は狂っていると言えます。今のNHKを一度解体し時代に応じた公共放送制度にするには自民党政権を廃止するしかありません。その為には選挙で自民党に投票しないことが必要です。