日銀引受で投資国債を発行すればよい

岸田政権が策定した補正予算には、経済産業省(経産省)が半導体支援に計3・4兆円の基金(半導体基金)予算を要求していていました。具体的には、次世代半導体の国産化を目指す国策会社「ラピダス」に6,000億円弱、半導体を受託生産する世界最大手「台湾積体電路製造」(TSMC)の日本第2工場に9,000億円、ソニーのイメージセンサーなどの従来型半導体に7,000億円強の補助金を計画していたようです。財務省との折衝のなかで減らされたものもある(TSMCへの補助金は9,000億円から7,500億円になったと報道されている)ようですが、これに近い額が認められることになるようです。

ここで基金となっているのは、国の予算は単年度使い切りですが、基金だと複数年度に渡って予算の執行が可能なため、事業の進捗状況に応じて補助金を出すのに都合が良いからのようです。卓越大学に助成を行う10兆円の大学基金が認められてから、基金が長期予算獲得のブームになっています。大学基金は甘利明衆議院議員が主導したと言われており、半導体基金も甘利議員主導によるものと思われます(甘利議員は経産族のドンといわれる人物)。

半導体基金からの補助金は半導体メーカーの設備投資の一部に充てられるものであり、投資資金です。この資金使途は国の予算で言えば固定資産投資であり、その資金源としては建設国債が当てられます。半導体基金から支出される補助金は、国としては使い切りとなる(国の固定資産に変化しない)ことから、資金源として建設国債は充てられず、普通国債が充てられると考えられます(税収増は国債の償還や他の使途に使わる)。

日本の最大の課題はGDPの増加(倍増)であり、半導体基金のようなGDP増加につながる国の補助金は必要であると考えられます。補助金というよりも投資と言った方が正しいように思われます。そうだとすれば今後このような基金(投資)は増やす必要がありますが、資金源が問題となります。現在は普通国債が資金源となっていると考えられますが、投資としての性格を考えると普通国債ではなく投資用の国債(投資国債)を新たに発行することが考えられます。投資ですが補助金として支出する(投資に見合う資産勘定は建たない)ので、資金源の投資国債は速やかに償却する必要があります。償却せず投資の効果で税収が増え、その税収で償還すればよいとの考え方もありありますが、国債残高が1,000兆円を超える現状では、税収増加分は普通国債の償還に充てられると考えるべきです。そうすると投資国債は速やかに償却するのがよいことになります。問題はどうやって償却するかですが、投資国債を日銀が日銀券を発行して引き受け、一定期間後に投資国債と当該日銀券を相殺します。投資国債を日銀が日銀券を発行して引き受けることは、財政法5条に違反すると思われますので、これをやるには財政法5条を改正(廃止)することが必要となります。現在日銀が国債の約6割を保有しており、この状態は実質的には日銀が国債を引き受けているのと同じです。日銀と財務省は、日銀は日銀当座預金を原資として市場から国債を購入しているのであり、日銀が日銀券を発行して国から直接国債を引き受けているわけではないと言うのでしょうが、このやり方では日本の金融制度を破綻に導きます。なぜなら最終的には国債が償還不能→日銀当座預金が返還不能となり銀行が破綻してしまうからです。銀行が信用創造により作り出した預金で国債を購入していれば(日銀当座預金が預金者のいない預金が原資であれば)信用創造により作り出した預金を法律により債務免除にすれば償還不能となった日銀当座預金と当該債務免除益で相殺すれば、実体経済上に影響がない形で処理できます(投資国債が信用資産であり、信用創造による預金が信用負債=擬制負債であることから、こう言う処理が可能)。これを一般化すれば国債(信用資産)と日銀券(信用負債)は、法律を制定すればいつでも相殺可能ということになります。だとすれば財政法5条で日銀が日銀券を発行して国債を購入できないこととすることは、この最終的手段(国債と日銀券を相殺して国債を償却する)を不可能とすることであり、財政法5条は廃止する必要があります。