日銀当座預金で国債を買っていたら金融緩和にならない

久しぶりに日銀毎旬報告を見ました。これを見る場合私が注目するのは国債、日銀当座預金、日銀券の3つの残高です。これで日銀が何を原資にして国債を購入しているかが分かります。1月10日時点では、国債の残高が約592兆円、日銀当座預金約543兆円、日銀約123兆円となっています。3か月前の2023年10月10日時点と比較すると国債と日銀当座預金が約5兆円増加していますので、国債は日銀当座預金で購入していることが伺えます。日銀券が3兆円増加し、貸付金が同額増加しているので、日銀券は貸付金の原資として発行されていることが伺えます。

日銀の総資産約749兆円のうち国債が約79%を占め、日銀は国債保有機関の様相を呈しています。そしてこれの購入原資の約92%が日銀当座預金となっています。普通の会計教育を受けた者にとって、当座預金とはいつでも引き出せる流動性の高い資産であり、これを残高が減らず実質固定資産となっている国債の購入に充てていることが不思議でした。それは、日銀当座預金が突如引き出されることがない言わば永久劣後債のようなものであることが分かり、何とか納得していますが、どこかでこの運用と調達のミスマッチによる混乱が起きる可能性は捨てきれません。多分日銀のバランスシートは日本の大法人の中で一番汚く、危ないものと言えると思います。理論と現実があまりに違いすぎるので金融を学ぶ学生には見せない方がよいと思われます。

もう一つ疑問に思っていることは、銀行が集まった預金を日銀に預けたものが日銀当座預金だとすれば、銀行預金で国債を購入していることになり、それでは銀行が自行の預金で直接国債を購入するのと変わらないと思えることです。自行の預金か日銀に預けた自行の預金が国債に変わっており、原資は同じものと言えます。これでは日銀が国債を購入しても市中に流れる資金量は変わらないことになります。市中に流れる資金量が増えるのは、日銀が日銀券を発行して国債を購入する場合だけのように思われます。ようするにこれまで金融緩和(市中を流れる資金量の増加)のため日銀は国債を銀行などから購入しているという説明がなされてきましたが、実は金融緩和になっていなかったのではないでしょうか。本当の金融緩和のためには、国債は日銀当座預金ではなく日銀券で購入するしかないように思えます。これをしないのは、財政法5条が日銀による国債の直接引受や政府への融資を禁止しているためと思われます。そうであれば、財政法5条を守ることと金融緩和をすること(経済を活性化すること)のどちらが重要なんだと言うことになります。国債を日銀券で購入すれば、将来国債と日銀券を日銀のバランスシート上で相殺すれば国債残高の問題(償還の問題)は簡単に解決できます。今のように国債を日銀当座預金で購入していれば、簡単に相殺できません。そろそろ財政法5条を廃止し、日銀は国債を日銀券で購入するように変える必要があるように思われます。