熊本大学は法学部改革が不可欠

私は熊本出身で、熊本大学は地元の高校生にとって受験勉強には丁度良い目標でした。熊本大学は、私の高校時代には国立大学の真ん中より上の位置付けだったと思います。その後九州や熊本県の経済的地盤沈下により熊本大学の位置付けは下がり続け、今では30位台になっていると思われます。それが元国立循環器病研究センター理事長小川久雄氏の学長就任により、変わり始めています。小川学長は就任時新学部の創設を公約に掲げ、程なくTSMCの熊本進出機会を捉え半導体教育研究センターおよび「情報融合学環」・「工学部半導体デバイス工学課程」を創設しました。新しい学部(相当)の創設は75年ぶりと言うことですから、如何に画期的な出来事か分かります。

その発表の記事の中に、これらの定員を確保するために法学部の定員を220人から190人に減らすという内容があり、驚きました。何に驚いたかと言うと、定員がこれまで220人もあり、なお190人もあることです。ここを改革しないと熊本大学は一流大学にはなれません。

その最大の理由は、法学部はしょうもない学部であることです。これは私が法学部出身であることからくる考え方です。法学部は法律の仕組みや内容を学ぶ学部であり、主に法曹や官僚(公務員を含む)の養成を目的にしています。しかし法曹や官僚になるのは法学部入学者の3分の1程度(それなりの大学で)であり、残りは民間企業に就職しています。民間企業なら会計知識や取引の仕組みなどを学んだ経済学部や外国語をマスターした外国語学部が有益であり、法律知識は余り役に立ちません。法学部卒の学生は法務部や人事労務部などに配属され、花形である営業部門への配属は少なくなります。それは法律を学んだ者は頭が固いと言う傾向があるからです。当然で、法学部では法理や各種の法律を学びますから、世の中の現象を法律行為として構成します。絶対音感の持ち主が世の中で音に出会うと音符で捉えるとの似た現象です。これでは融通が利かない、柔軟性がない人が多くなるのは明らかです。法律を真面目に学べば法理や決まりごとの囚人になってしまいます。これでは世の中で一番重要な創造性が失われてしまいます。現在大学の文系学部の中では法学部の定員が一番多くなっていますが、これは世の中の決まりごとをよく守る国民を養成するためです。為政者にとって都合の良い国民を増やすためです。これが分かれば法学部が如何につまらないか分かると思います。

そう考えると熊本大学法学部に190人の定員は多過ぎることが分かります。2023年度に熊本大学法学部出身者で司法試験に合格したのは3人(法科大学院在学中合格者のみ。卒業者は不明)となっていますので、熊本大学法学部法曹コース(3年で学部卒業、その後法科大学院進学)は20名もいれば十分であり、その他のコース(4年卒業)は公務員要員として40人もいれば十分だと思われます。民間企業に行くなら法学部を出る必要はありません。学生の可能性を削ぐことになります。従って熊本大学法学部の定員は60人で十分です。というより精鋭を集めようとしたら60人が限界です。

精鋭を集めるためにはさらに入試改革が必要です。熊本大学は大学入学共通テストとして5教科7科目450点、個別試験国語200点、英語200点としていますが、これを見直す必要があります。法学部法曹コースに行くのに必要な能力は、国語・政治経済・英語の3つあれば十分です。5教科7科目でいいのは東大と京大のみであり、それ以外の大学は偏差値に応じて教科と科目を減らす必要があります。何も絶対かなわない土俵で戦う必要はないのです。早大や慶大は3教科3科目なら東大京大に負けないレベルです。熊本大学法学部も共通テストの5教科7科目を国語・倫理政治経済・英語の3つに絞り込み、これを足切りに使います。個別試験は総合国語(係争事件を提示し判決文かせる。必要な専門用語は問題文に注記。300点)と英語(100点)とします(司法試験に合格するのに英語は不要、ただし法曹になってから必要になる)。司法試験では数学や理科、地理・歴史の知識は必要ありません。これらはリベラルアーツ教育には必要ですが法曹養成には必要ありません。科目が少ない分この3つについては高得点が要求されます。高校時代に熊本大学法学部法曹コースにターゲットを絞り、この3つを重点的に勉強すれば共通テストでは90%以上の正解率になれます。これくらいないと司法試験に合格することは端から無理です。この得点は私立トップの早慶並みと言うことになります。学費の高い早慶には行けない生徒の獲得を狙います。

定員が減り教員も減る法学部の授業は九州大学法学部と連携し、オンライン授業で相互乗り入れをします。九州大学も今の定員(189人)は多すぎる(2023年司法試験合格者22人)ので、削減が必要となります。法科大学院も提携しているようなので法学部全体で連携した方が良いと思われます。九州大学もどんどんレベルが落ち(旧帝大から旧低大へ)、全国的には中堅大学になっているので、改革が必要になっています。

法学部で削減する定員は半導体関連学部や計量経済学部(新設)、防災科学部(新設)などに割り振ります。熊本大学発展のためには法学部改革が不可欠です。