肥薩線復旧に拘る蒲島知事は学ばない人

2020年7月の豪雨で被災したJR肥薩線の復旧を議論する国と熊本県、JR九州の会議が2月13日、熊本市で開かれたと言うことです。会議は非公開だったため内容は断片的にしか分かりませんが、会議に出席したJR九州の松下琢磨総合企画本部長は終了後、「現状の復興方針案では、持続可能性の確保ができていない。慎重に議論し、それぞれが納得する形で決定することが大切だ」と述べていますから、持続可能性が確信できない限りJR九州としては合意できないという意志だと思われます。持続可能性の内容については、JR九州が「観光には波があり日常的な利用が不可欠。観光振興と2本柱で検討してほしい」「観光振興策については、肥薩線の復旧時点で観光施設など実現できる状態まで進める必要がある」と述べていることから、日常的な利用で鉄道の採算が取れることと運行開始までに観光施設が整備され乗客が増えることが必要と考えられます。共に肥薩線が黒字になる肝の部分ですが実現は困難であり、JR九州が熊本県に肥薩線復旧断念を迫っているとも言えます。

これに対して会議のメンバーである熊本県の田嶋徹副知事は「地域の人が肥薩線を自分の鉄道だと認識して最大限に活用してもらうにはどうすればよいか、県や地元で考えて具体策をとりまとめたい」と述べていますが、田島知事は以前地元自治体との検討会議で「日常利用は極めて厳しい」と述べていますので、JR九州が納得する日常利用者確保策の提出は困難と予想されます。また熊本県が作成した肥薩線復旧ビジョンでは、「日常利用は極めて困難」を前提に観光振興策で収益を確保するとなっており、観光振興策についても肥薩線復旧が決まらない限りこれ以上の具体化は無理な状況です。要するにJR九州は、熊本県がJR九州に提出した復旧ビジョンを「絵にかいた餅」と言っているのと同じことであり、熊本県の事務局としては「そうなるよな」と言うのが正直な感想だと思われます。

今回のJR九州の姿勢について蒲島知事は2月16日の県議会で「クリアすべき課題はあるものの、これまでの鉄道復旧に対する慎重な姿勢から一歩前に進んだ方向性が示された」

「私の任期は残り2か月となります。任期中に鉄道復旧に向けた基本合意ができるよう全力を尽くして参ります」と述べています。こう言うしかないのかも知れませんが、どう考えて虚勢としか思えません。

JR九州は日田英彦山線の復旧検討会議でも同じパターンで粘り、福岡県や地元自治体のギブアップ、JR九州提案のBRT採用を勝ち取っています。この期間が2年であり、肥薩線復旧もまもなく2年になりますが、JR九州には期限を切る必要はありません。また沿線自治体も肥薩線なしで日常生活は回っており、結論を急ぐ必要はありません。期限があるのは任期が4月15日までとなっている蒲島知事だけです。熊本県の肥薩線復旧問題担当部署は、蒲島知事が川辺川ダム建設中止判断により発生した人吉球磨水害の贖罪として肥薩線復旧を何としても実現したいと思っていることから、仕方なくできもしない肥薩線復旧ビジョンを作成しています。これは現在第三者委員会で調査されている旅行補助金不正と同じ構造です。やはり熊本県庁の不正蔓延の中心には蒲島知事がいることが分かります。蒲島知事の財務見通し上持続不可能な肥薩線復旧方針の決定は、科学的知見によればあり得ない川辺川ダム建設中止判断と同じパターンであり、蒲島知事は学ばない人と言えると思います。