検察は自民党のマネーロンダリング担当
自民党が裏金議員の処分を発表しましたが、処分されたのは全体84人のうち39人で、45人は無罪放免(厳重注意)となりました。処分も塩谷立衆議院議員、世耕弘成参議院議員の2名が離党勧告で、下村博文衆議院議員、西村康稔衆議院議員の2名が党員資格停止1年、高木毅衆議院議員が党員資格停止6カ月で、他34人は役職停止や戒告処分で痛くも痒くもないものです。処分されたのは裏金金額が500万円以上の議員で、残りの45名は軽微としてお咎めなし(厳重注意)と言うことです。今回の裏金は政治資金として帳簿に記載されていないことから、政治資金とは認められず、民間企業や個人では脱税とされます。これを考えると甘い処分と言えます。自民党のやることですから、このような大甘の処分は予想されたことであり、国民の多くは予想通りという感想だと思われます。裏金議員に対する本当の処分は、選挙で国民が行うこととなります。その前に本件の裏金議員は、検察が捜査し不起訴としたことから検察審査会に審査が申し立てられており、あと2,3カ月以内に議決が行われると思われます。多くの議員が起訴相当議決を受ける可能性があります。ここで初めて裏金議員は自分らがやったことの重大さを思い知ることになります。
この処分の前に衆議院および参議院で裏金問題についての政治倫理審査委員会が開かれ、衆議院で5人、参議院で3人の裏金議員が出席しました。その1人である世耕参議院議員は「本件は東京地検特捜部が厳しい捜査を行い、嫌疑なしと判断したものだから、何ら問題ない」と弁明(抗弁)しました。この論理は多くの裏金議員が用いています。私はこの場面を見て、「検察が裏金議員のマネーロンダリング担当になっている」と思いました。検察は裏金議員から裏金の明細を提出させるとともに、自ら調査して裏金金額を確定し、確認書を交わしたと言われています。ということは、裏金は犯罪(政治資金規正法違反)であることを前提として、金額の多寡で起訴・不起訴を決めています。今回は裏金が4,000万円以上あった議員を悪質として起訴し、4,000万円未満は起訴するほど悪質とは言えないと判断したと考えられます。従って起訴されなかったからと言って、世耕議員が言うように嫌疑なしとされたわけではありません。ここを分かって発言しないと盗人猛々しいという印象になります。世耕議員は裏金議員の中で一番この論理(検察が嫌疑なしとしたのだから問題なし)を展開しており、国民の反発が強いように思われます。
同時に世耕議員から盾にされた検察は、政治家の守護神という印象が強くなりました。最近検察は政権の顔色を窺い、政権の指示がなくても意向を忖度し、政治家や官僚は捜査しないようになっている感じがします。これは2010年に大阪地検特捜部が元労働省局長村木厚子氏を有印公文書偽造罪の共犯で起訴しましたが、その証拠を検事が偽造したことが判明し、検察改革に至ったことに起因します。これ以降検察は官僚に関する事件の捜査を控えるようになりました。同時に政治家についての捜査も政権の承諾の下に進めるようになり、大物議員の捜査には手心を加えるようになりました(甘利明議員のあっせん収賄罪不起訴、二階俊博衆議院議員の裏金3,526万円を不起訴など)。これは検察の幹部人事には内閣人事局の承認が必要であり、政権の意向に従わなければ幹部人事に拒否権を行使される可能性があるためと考えられます。検察も行政機関の一部であり、政権の指揮下に入るのは仕方ありませんが、検察が政権の指揮監督に従うのは法務大臣が指揮権を発動したときだけのはずですが、現在ではあらゆる場面で政権の指示を仰いでいると考えられます。そして今回の自民党裏金事件においては、検察がマネーロンダリングに使われています。検察が犯罪者の片棒を担いであるということです。このままでは検察は国民の嫌われ者になります。