旅行割でのTKUの対応は報道機関失格

熊本県がコロナ対策として実施した旅行助成で県庁幹部が不正(不適正な受給)もみ消しを指示したとして2023年9月公益通報がなされた件で、2024年4月11日熊本県が設けた第三者員会が報告書を提出しました。結論は、助成の基準が不明確であり、そもそも不正があったとは言えないとし、幹部の不正もみ消し指示の事実もなかったとしました。はっきりしない基準で不正とされた旅行社はたまったものではありませんから、結論は妥当だと思われます。

本件では熊本のローカルテレビ局TKUの旅行子会社TKUヒューマン社(以下TKU)にも不正があったとされ、不正額を巡りTKUが県と争う姿勢を見せたことで県幹部との協議に至り、その場での幹部の発言が見逃し指示を疑われる原因となりました。TKUはこの前に移動に周遊券のみを使った旅行商品約2,500万円が不正とされていました。これについては他社もおとなしく従ったことから、TKUも最終的には返還に同意しましたが、返還に関する話し合いの中でTKUは社名を出さないことを条件に返還に応じると言っていると熊本日日新聞(熊日)に報道されました。しかしこれは県の担当者が返還すれば社名は公表しないこともありうるとTKUに述べたものであり、TKUが求めたものではなかったことが報告書で明らかになっています。

更に後日別の旅行商品約2,000万円に不正の可能性があると報道され、TKUが反発します。というのはこれ(市電で移動した最終電停から飲食店までタクシーを使った)については、TKUの担当者が県の担当者にメールや電話で確認して問題ないという回答を得ていたからです。県の担当課は正式な回答ではなく認められない、返還しないなら刑事告訴も辞さないという態度だったようです。そのためこれを県の態度とすることの承認を取るべく副知事協議となりましたが、副知事が担当課の条件設定に問題はなかったのか検討せよと指示したことが、その場にいた中間幹部に見逃し指示と理解され、担当課の職員に伝わって公益通報となったようです。副知事の指示は幹部だからこそできる指示であり、妥当なものと言えます。たぶんこの後蒲島知事と協議していれば条件の見直しになっていたと思われます(蒲島知事の関与について報告書は全く触れておらず謎を残した)。

本件におけるTKUの対応は報道機関として失格と言えます。先ずTKUが助成金返還の条件に社名非公表を要請したという報道に対しては、即座に事実と異なると反論すべきでした。反論しなかった結果、この報道がなされてから報告書が公表されるまでの間約1年間TKUは悪者扱いとなりました。その後報道された別の不正疑いについてもTKUの立場(県の担当者に確認している)を公表すべきでした。この2つの疑いが熊日に書かれれば、多くの熊日読者はTKUは黒だと思います。その頃地方局は放送免許の更新時期でしたので、TKUは免許更新不可でもおかしくなかったと思われます。

報告書公表後TKUは「調査委員会の調査によって、TKUヒューマンが旅行業法に抵触するなどの不適切受給がなかったことが証明されたと認識しております」というコメントを出していますが、自らの潔白を主張しなかったことを考えると白々しく聞こえます。