大分には地図に載らない道がある

「大分県人の歩いた後にはぺんぺん草もはえない」という言葉を聞いたことがあります。これは大分県人の悪口を言ったものではなく、合理的な行動を言ったものです。大分県人には、九州では珍しく合理的な人が多いのです。私の大学時代の友人を見ても、当たっていると思います。で、なぜだろうと考えて来て、大分に行って分かりました。大分には別府鶴見岳のロープウェイが近鉄経営であるなど、関西資本がかなり入っているのです。え、なぜと考えてみると、毎日発着の大阪と別府、神戸と大分を結ぶフェリー便があり、九州と関西を結ぶ海の動脈になっているからです。そのため、大分県は、他の九州各県と比べ関西との人の往来が盛んとなり、関西商法の影響を受け、大分県人が合理的になったと思われます。

九州は、どちらかというと福岡・熊本・鹿児島の西側を中心に交通網が整備されてきました。新幹線、高速道路がそうです。大分県には、2016年には東九州自動車道が開通し、北九州市まで高速道路がつながりました。これで大分県は大分自動車道と合わせ2本の高速道路で九州各地とつながったことになり、道路網では九州でも屈指の便利さになっています。新幹線については、国に東九州新幹線の建設を要望しているようですが、目途はたっていないようです。今後大分県、宮崎県では大幅な人口減少が見込まれていますから、実現は難しいのではないでしょうか。今の在来線を維持した方が、沿線の多くの住民の利便性を確保でき、メリットが大きいように思えます。

大分県の港は、戦国時代から、九州から京都、大阪に行って帰るための瀬戸内航路の港として重要でした。加藤清正は、関ヶ原の戦いの論功行賞で、天草を上地して鶴崎の港を確保しました。その他いくつかの小藩が豊後の港を利用していました。九州と関西を結ぶ海路の中心は、瀬戸内海であることは今でも変わらず、神戸・大阪と大分・別府を結ぶフェリー航路は、物資における九州・関西間の海の動脈の1つとなっています。これは、地図に載っておらず、多くの人たちが気づいていませんが、大分県の強みとなっています。

最近関西と九州間のフェリーが見直され、利用する旅行客が増えていると言います。新幹線や飛行機で行くよりも交通費が安い、それに宿泊費を浮かせられるというメリットが理由のようです。しかし、瀬戸内海は日本有数の景観を持つところであり、昼間これを楽しむことができれば、ゆったりと船旅を楽しみたい乗客で人気化すると思われます。今のフェリーの運航時間を見ると、大分・別府を夕方7時頃に発って、神戸・大阪に翌朝7時頃に着くことになっていますので、残念ながらこのニーズは満たしません。朝出発して、その日の夜大阪に到着するようなフェリー便または観光船の誕生が待たれます。