中央省庁の信用崩壊=日本の崩壊

厚生労働省で統計データの不正が明らかになりました。

雇用保険や労災保険の給付額の算定基準となる毎月勤労統計を手抜き調査して作成したということです。毎月勤労統計では、従業員500人以上の事業所を全て調べることになっているのに、厚労省は04年から東京都について調査対象の3分の1しか調べていなかったということです。調べていなかった残りの3分の2は、中小企業に比べて賃金の高い大企業だったため、統計結果の賃金が実際より低い金額となり、雇用保険金や労災保険金が過少に給付されていたということです。これによって、延べ約2000万人が過少給付だったそうで、追加給付にかかる費用は事務費を合わせ、約800億円にのぼるということです。更に悪いことには、既に破棄している資料もあり、正しい統計データを算出するのは困難になっているということです。

最近こういった中央官庁のずさんな統計データや仕事ぶりが次々と明らかになっています。

最近では、裁量労働制法案の審議に際して厚生労働省が提出した労働時間などの調査結果がずさんな内容であることが問題になりました。この調査では、裁量労働制で働く人の勤務時間を1時間以下とした実際にはあり得ない調査結果が多数あったにも関わらず、そのデータを使い、裁量労働制で働く人と一般労働制で働く人の労働時間を比較し、裁量労働制で働く人の方が労働時間は短くなるという裏付けデータに使用しました。これは、政府が提出した裁量労働制法案の審議に有利となるようにデータを編集・利用したものです。

毎月勤労統計の不正は、2018年3月に公表された新しい統計方法に基づく同年1月の毎月勤労統計での賃金の増加率がこれまでより高く、統計がおかしいのではないかという指摘を契機として判明したものです。安倍首相の掲げるアベノミクスの成果として、賃金が上がっていることをアピールするために、賃金の上昇率が上がったという統計データが欲しいために、調査方法を変えたものと思われます。

これらを聞くと暗澹たる気持ちになります。国から発表されるデータがどれも都合よく作成・加工されているのではないかと思えてきます。

近畿財務局文書改竄事件も、政府答弁と辻褄を合わせたのめに官僚が行ったものでした。官僚は、政府の都合の良いように調査方法を考え、そのデータが都合悪ければ加工、編集するのが仕事のように思えてきます。これは、耐震偽装問題と同じであり、いずれ国民の生命・財産に被害が生じます。

これら政府の不正で大きな被害を受けるのは、一般大衆、即ち国民の多数を占める人たちです。ビジネスエリートは被害を受けません。それは、彼らは政府を信用していないからです。こういう不正をしていることを前提でビジネス判断や行動をしています。不正な政府に付き従う大衆の裏道にビジネスチャンスを見出しているのです。間違った行動をする多数の人たちが居なければ、お金儲けはできません。

これらのビジネスエリートに対抗するためには、中央官庁はエリート組織として認め、国家の為プライドを以て仕事ができる職場としての地位を保証して上げることが必要です。「あなた達はエリートなのだから、エリートらしい仕事をして」と要求するのです。そうすれば彼らは懸命に答えてくれます。

私は、安倍首相がこれだけ長く首相を務められるのは、安倍首相は日本人の最多数層(中央値)に属するからだと思います。自分たちに一番近いレベルの人なのです。だから主張も近いし、やることも納得できます。閣僚も安倍首相に近い人たちが集まっています。その結果、親近感のある政権と感じ、人気が続いているのだと思います。しかし、官僚が安倍首相や閣僚に合わせた結果、今の中央官庁の信用崩壊の状況を招いたと考えられます。官僚はエリートだから、優秀な首相や閣僚の高度な要求にも答えられますが、そうでない首相や閣僚にも簡単に合わせられます。それが今起きているように思います。最近、「国のレベルは首相のレベルに収束していく」ように感じます。トランプ大統領のアメリカを見れば分かります。表面は違いますが、やることはミニトランプだと思える安倍首相の日本もそうです。そうだとすれば、日本の首相は最多数層から出すのではなく、誰もが憧れるエリート層がから出すのが良いのでないでしょうか。最多数層は選挙を通して、任免権を持ちます。そうしないと、いずれ日本崩壊に至り、損をするのは自分たちです。