安倍首相、連続在任期間新記録で佐藤元首相と比べて見れば

8月24日、安倍首相の連続在任期間が2,799日となり、これまでの歴代最長であった佐藤栄作元首相を抜き新記録となったという報道です。
佐藤元首相は、安倍総理の祖父岸信介元首相の弟で安倍首相の大叔父になります。佐藤元首相は、1964年から1972年にかけて首相を務め、1972年には沖縄の日本復帰を実現した人です。第二次世界大戦後米国に占領されていた沖縄の日本復帰がどれだけ難しいかは、ロシアに占領された北方4島の返還交渉を見れば分かると思います。沖縄は1871年に琉球王国の領土を鹿児島県の管轄としたことから日本となりますが、それまでは琉球王国という独立国家であったことになります。1854年には米国との間で琉米修好条約を締結していますから、外国も独立国家と見なしていたことになります。この事実と中国を睨む沖縄の位置的重要性から考えると、米国は沖縄を琉球王国として独立させる手もあったと考えられます。これを佐藤元首相が日本復帰に持って行ったことは歴史的に見ても偉大な功績です。安倍首相が首相在任期間で、この偉大な事業を成し遂げた佐藤元首相と並んだというのですから、さぞや立派な業績を上げているだろうと見て見ると、からっきしありません。安倍首相と言えば、首相就任当初に行った大規模金融緩和しか浮かびません。大規模金融緩和は、それまで日銀が頑強に反対し、多くの財政・金融学者も反対してきた政策でしたから、これを押しのけて実施したことは英断と言えます。その後世界各国も一様に実施しており、先見の明があったと言って良いと思われます。しかし、大規模金融緩和は、日銀の国債買入で行われますから限度がありますし、緩和縮小の筋道が必要です。安倍首相も大規模金融緩和実施当初はこれを心得ており、大規模金融緩和は強い経済を取り戻す手段であり、財政政策と成長政策をセットで実施すると述べています。この3つをセットで実施し、自律的経済成長を実現し、大規模金融緩和が必要ない状態に戻す必要がありました。そしてこれが安倍首相のゴールだったのです。ところが大規模金融緩和の結果、株価と不動産価格が上昇し、所得や消費者物価の上昇が起きたことから、財政政策と成長政策が忘れ去られてしまいました。その結果大規模金融緩和の効果は徐々に喪失して行き、所得の上昇や物価の上昇が止まった中で2019年10月消費税増税を実施したことから、経済は反転縮小に向かいました。所得が伸びない中で消費税を2%引き上げればその分消費が落ち込むことは自明のことであり、これまで何度も繰り返えされてきたことです。安倍首相は2016年度に予定していた消費税引上げを見送っており、2度目は見送れないと考えたものと思われます。ここら辺が日本人の中央値に属する安倍首相の思考力の弱さです。

今年に入ってコロナ拡散により、安倍首相はまた思考力の弱さを露呈しています。突然の学校一斉休校指示、アベノマスクの配布指示、ステイホーム動画のアップなどで安倍首相の頭の中をさらけ出してしまいました。その後はコロナ対策は専門家に丸投げで一切表に出なくなってしまいました。本当のリーダーの資質はこういうときこそ発揮されます。考える技術さえ有れば、コロナ感染拡大のような初めての事態でも、感染専門家や経済専門家などの英知を集めて、国家的見地から最善の政策を判断することは難しくありません。安倍首相はこの訓練が全くできていないのです。安倍首相もこのことを良く自覚しており、国民から貼られた無能と言うレッテルが恥ずかしくて仕方なく、自分の殻に閉じこもっている状態だと思われます。今の安倍首相は、表に出ないことで自分の生命を守っている状態です。おそらく体調に重大な変調を来し、担当の医師からは入院または療養を進められていると思われます。内閣改造前に辞任ではないでしょうか。

安倍首相が連続在任期間で抜き去った佐藤元首相と比べて見ると、構想力、交渉力、決断力、および成果の面で大差があることが分かります。