公務員の賃金だけなぜ全国一律?

今年の最低賃金の改定額が8月21日全都道府県で出揃ったとのことです。今年は国の中央最低賃金審議会がコロナの影響を踏まえ引き上げ額の目安を示しませんでした。しかし、各地の審議では40県が時給1~3円の引き上げを答申しました。最高は3円引き上げで、青森、岩手、山形、徳島、愛媛、長崎、熊本、宮崎、鹿児島の9県。茨城、香川など14県が2円、宮城、神奈川など17県が1円上げます。一方、東京、大阪など7都道府県は据え置きました。その結果、全国加重平均は1円増の902円になるとのことです。

引き上げ後の最低賃金の最高額は東京の1013円で、1,000円超は東京、神奈川だけです。最低額は792円になり、秋田、鳥取、島根、高知、佐賀、大分、沖縄の7県です。最高額と最低額の差は221円となります。

最低賃金の引き上げは毎年の恒例行事ですが、その度に疑問に思うことがあります。それは、最低賃金は全国各地の経済状況を反映し、約22%の差があるのに、公務員の賃金(給与)はほぼ全国一律なことです。

国家公務員と地方公務員の給与の関係を示したものにラスパイレス指数がありますが、地方公務員の給与は、国家公務員の95~105%となっています。2019年度の都道府県公務員の給与をラスパイレス指数で見ると、高い順に静岡県102.3、神奈川県101.7、三重県101.6、東京都101.0となります。低い順に見ると、鳥取県95.3、鹿児島県96.2、青森県97.4、宮崎県97.5となります。

一方都道府県民1人当たりの所得を見ると、2017年度のデータですが、多い順では東京都450万円、愛知県357万円、静岡県332万円、滋賀県327万円となります。少ない順では沖縄県210万円、鳥取県233万円、鹿児島県239万円、宮崎県240万円となります(千円以下切り捨て)。即ち所得は地方公共団体間で50%くらい差があります。都道府県民所得は地方公共団体の経済力を示すものであり、通常賃金はこの経済力に応じて決まります。最低賃金は、最低限の生活を営むために必要な収入を得るための賃金を定めたものであり、都道府県民所得の差がそのまま出てこないのは理解できます。しかしそれでも約2割の差は付けられています。これは都市と地方の物価水準や生活コストの差を反映していると思われます。

ならば同じ地方に住む公務員も最低賃金の差に応じた給与差があって然るべきだと思います。その地方の経済力が低いわけだし、物価水準や生活コストも低くなっているわけだから、それに応じて給与水準も低くなるのが当然です。なぜ公務員の給与(賃金)だけラスパイレス指数を用いてほぼ同一になるように決めているのでしょうか?これを正当化すれば最低賃金もラスパイレス指数を用いて決めればよいということになります。また大企業や中小企業、正規や非正規の賃金についても同様となります。

このように公務員の賃金の決め方は特権的と言えます。公務員にもその地方の経済力、物価水準や生活コストを反映した賃金水準の設定が必要です。