日産、好決算でも危機は深まる

日産は2月8日、2024年3月期第3四半期決算を発表しました。

累計では売上高9兆1,714億円(前年同期比+23%)、営業利益4,783億円(同+65.1%)、経常利益5,401億円(同+42.0%)と立派な数字です。しかし翌日日産の株価は10.1%下落しました。これは第三四半期単独の実績が市場予想の1,728億円を18%下回る1,416億円だったことと第4四半期の世界販売が前年同期比マイナスの予想となり今期の世界販売計画を370万台から355万台へ下方修正したからです。修正後の今期の販売台数は、中国が6,000台減の794,000台、日本が1万台減の51万台、北米が5万台減の132万台、欧州が3万台減の37万台となります。4-12月期の世界販売が前年同期比1.2%増の約244万台(四半期平均約81万台)ですから、第4四半期の約111万台という販売目標は厳しいものであり、昨年(約354万台)を大きく下回ることも考えられます。

日産はゴーン会長時代の2017年には577万台を販売しており、今期の販売台数(予想)はそれに比べると222万台減少し、減少率は約38.5%となります。これだけ販売台数が減少すれば国内で工場のリストラが行われるはずですが、その話は聞きません。スペイン、インドネシアで工場を閉鎖し、メキシコでは生産能力を削減しただけです。これで数字上は今期営業利益6,200億円と過去最高の世界販売を記録した2017年の5,748億円を上回っています。これは偏に米国での高収益が寄与しているようです。米国の1台当たり平均販売価格は約4万ドル(円換算で約600万円)であり、円安のため日本から輸出した車の利益が大きくなっているようです。ということは、今は日本から輸出するのが一番儲かることになり、大幅な世界販売減でも日産が国内工場でリストラをしないで済んでいる原因のようです。しかし日産は今期の米国販売を当初の計画から5万台下方修正しており、韓国の現代・起亜連合が米国で販売を伸ばしていることを考えると、今後が心配されます。ただしスバルの米国販売が約63万台(2023年度)、マツダが36万台であることを考えると100万台を超える販売台数を誇る日産は当面米国で高収益を上げ続けられると予想されます。一方中国市場は株式の暴落のように販売台数を減らしており、採算が厳しくなることが予想されます。中国市場は日産にとって米国と並ぶ100万台販売市場でしたが今期は80万台を切るレベルを予想しています。この減少の最大の原因は中国製EVの拡販と言われていますが、日産のブランド力低下も大きいように思われます。日産は世界各地で中途半端なブランドになっており、今後世界のどこかで人気メーカーになるとはちょっと予想できません。日産はスバルやマツダのように米国市場で生きていく覚悟を持ち、米国でコアなファンを掴めるような車造りをするしかないように思われます。

決算的には過去最高に迫るほど好調に見える日産は、ゴーン会長逮捕以来の販売減少に歯止めがかかっておらず、危機は深まっているように思えます。