収入も物価も2倍になる時代はすぐそこ

今年の賃上げは史上最高レベルになりそうです。サントリー・第一生命・住友銀行が7%以上、三菱UFJが6%以上の賃上げを目指すなど、これまで高収益なのに周りの企業に遠慮して表立って大幅な賃上げを控えていた企業が大胆な賃上げを発表するようになりました。これらの国際企業は円安もあって海外の現地法人や支店で、現地の従業員と日本人社員で賃金の逆転現象(ドルベースで見たら現地従業員が日本人幹部より高給となっている)が起き、是正が必要となっていることも要因と思われます。このような国際企業による国際賃金格差是正のための賃上げは、昨年ユニクロが発表した最大4割の賃上げから始まっており、国際企業が追随せざるを得なくなっています。

日本は1990年頃のバブル崩壊後賃金は上がらない中で物価を抑えることで国民の生活を維持してきました。その間世界の多くの国では2%を上回る物価の上昇と賃上げを繰り返してきました。その結果国内の賃金と物価の水準は、先進各国のそれと比べると半分くらいの水準になってしまいました。ラーメンの1杯の値段が米国や多くの先進国で2,000円を超えているのに日本では1,000円以下であることがこの実態をよく表しています。この場合日本のラーメン価格が国際価格の2,000円に鞘寄せするのが当然であり、2,000円が1,000円に鞘寄せすることはありません。バブル崩壊後の約30年間1ドルが100~110円と輸出企業がダメになった超円高時のドル円レートを維持していたことも日本の賃金および物価が上がらなかった要因ですが、これが昨年来円安に演じたことで、ドルベースで見た日本の賃金および物価の低さを浮き彫りになりました。

一方円安は如何に日本の経済が輸出に強い影響を受けるかを立証しています。トヨタやホンダなど日本の自動車メーカ―は軒並み高決算となっていますが、ほとんどが米国販売の利益によるものです。米国では車一台当たりの平均販売価格は約4万ドルということですから、日本から輸出される車は利益率50%くらいあるのではないでしょうか。米国での販売台数が多い日本の自動車メーカーが好決算になるのは当然と言えます。これを反映しホンダやマツダは組合からの賃上げ要求受け爆速の満額回答を行っています。これを見ると日本は輸出主導でしか経済再建はなく、輸出主導経済への復帰のためには日本の物価や賃金の国際的水準に応じたドル円レートを維持することが重要であることが分かります。現在の日本の賃金や物価水準は、1985年プラザ合意前の水準であり、ドル円レートはプラザ合意前の水準が妥当とも言えます。従ってまだまだ円高状態であり、1ドル200円くらいまで下落してよいことになります。そして1ドル200円下で賃金と物価は先進諸国並みにまで上昇を続けることになります。これは単に賃金と物価の水準訂正(国際水準への鞘寄せ)であり、国全体で見れば生活水準は変わらないことになります。国の政策としては一次産品から順次値上げを認め、それを次の段階が拒否できない仕組みを作ることです。物価が上がれば賃金も上げざるを得なくなり、企業は高付加価値商品の販売や輸出に力を入れざるを得なくなり、社員は高パフォーマンスが求められるようになります。こうして日本社会が変貌を遂げることになります。平均年収1,000万円、ラーメン一杯2,000円の時代はすぐそこです。